レム睡眠って何?

 1952年、シカゴ大学のクライトマンと大学院学生のアセリンスキーは、眠りに入ったときにおこるゆっくりと浮遊するような目の動きに関心をもち睡眠中の眼球運動を終夜記録していました。この実験中、睡眠のある時期になると、眼球が急速な動きを繰り返すことを発見しました。この目の動きは目覚めているときよりも活発な鋭い動きで、眠りに入るときの目の動きとはぜんぜん違っていました。しかも、この特徴的な目の動きは、一晩の中であるきまった周期性をもって繰り返しあらわれました。その後、デメントらは目の動きと同時に脳波を記録し、目が急速に動いているときには、脳波が浅い眠りのときと似たパターンを示すことをあきらかにしました。また、彼らは、この時期に夢を見ていると指摘するとともに、この時期の睡眠を急速眼球運動(Rapid Eye Movement)の頭文字をとってREM(レム)睡眠と呼びました。

 私たちが目覚めて活発に脳をはたらかせているときの脳波を記録すると、ベータ波と呼ばれる小さな低い脳波(低振幅速波)がでています。安静に目を閉じているときにはアルファー波と呼ばれる10Hz(ヘルツ)前後の規則的な脳波が出ます。座禅の修行の僧侶や、眠気をおよぼすときには七ヘルツ前後のシータ波と呼ばれる脳波が出ます。浅い眠りの状態では、13Hz前後の波がいくつかまとまって出現し、波の振幅が次第に大きくなり、ある大きさになると振幅が次第に小さくなります。全体として糸巻きの紡錘のようなかたちなります。これは、紡錘波とかシグマ波と呼ばれる脳波です。睡眠を定義する国際基準では、この紡錘波の出現が睡眠のはじまりと定義されています。眠りが深くなると脳波はゆっくりとした波(徐波)となります。徐波はデルタ波とも呼ばれ、脳波の正常な波のなかで最もゆっくりとした大きな波です。その周波数は0.5から4Hzです。深い眠りの状態では、脈拍は遅くなり、呼吸もゆっくりと規則正しくなります。この時期の睡眠は徐波睡眠あるいはノンレム睡眠と呼ばれています。

 一方、レム睡眠の時期には、覚醒しているときのような振幅の小さな活発な脳波パターンを示し、急速な眼球運動がみられ、呼吸や脈拍の乱れも生じます。血圧が上がったり下がったりし、ペニスやクリトリスが勃起するなどの自立神経機能に興奮や乱れがあらわれます。脳が覚醒期に近い状態にあるのに反して、体の筋肉の力が抜けておりその意味では深い眠りの状態です。このため、レム睡眠は逆説睡眠とも呼ばれています。眠りにはいってから約90分で最初のレム睡眠が出現します。1回のレム睡眠の時期は10分から30分つづきます。その後も、約90分の周期でノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返し出現し、一晩のうちに4ー5回のレム睡眠が出現します。レム睡眠中に無理に起こすと、夢をみていることがが多いので、レム睡眠が夢の発現のメカニズムに関係しているものと考えられています。

 レム睡眠を調節する中枢は脳幹の延髄から橋にかけて存在します。一方、ノンレム睡眠の調節の中枢は脳幹の最上部と終脳にあります。調節中枢がより下位にあるので、レム睡眠は比較的下等な動物で出現した系統発生的に古いタイプの眠りと考えられています。また、発育のはじめの時期にはレム睡眠の比率が高く、発育するにつれて急速に減っていきます。生まれたばかりの赤ちゃんでは、レム睡眠の比率は72%にも達しています。この事実も、レム睡眠が系統発生的に古いことを示しています。睡眠不足のとき、レム睡眠は、不足した時間を同じ長さの時間の眠りで取りもどす必要があります。レム睡眠中には骨格筋(骨についている筋肉)がゆるんでいて動くことのできない状態にあります。体温調節も乱れます。これらの特徴も、レム睡眠がより低い次元の眠りであることを示しています。一方、ノンレム睡眠はより深い眠りであるために、レム睡眠よりも短い時間で体温調節や筋肉の緊張などを適当に保ちながら体を休息させることができます。このため、睡眠不足のとき眠りの深さを深くし、結果として睡眠時間を短くすることができます。

 

 

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