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頭頂連合野の話


 頭頂葉で中心溝のすぐ後ろにある体性感覚野の後方から後頭葉までの部分である。空間情報(「どこに」や、「どこへ」)を扱う。また外界へのアクションに関与する。

1.ヒトの頭頂連合野の病巣に伴う症状

(1)空間認知の障害:頭頂連合野が破壊されると物体間の距離、遠近、左右、上下の判断が困難となる空間定位の障害や、歩きなれた街の道順が判らなくなる地誌的障害を起こす。右側の頭頂連合野の障害は、空間の左半分を無視する半側空間無視を起こす。この場合、両側の視野ともに正常であるにもかかわらず、また視線の方向に関係なく対象物の左半分を無視してしまう。たとえば、病院でトレーに乗ってきた食事の左半分を食べ残したり、横書きの文章の右半分だけを読んで文章の意味が理解できなくなったりする。

(2)高次の体性感覚情報処理の障害:触覚的物体失認や、触らずに見たものと見えない状態で触ったものが同じか違うかを判断できない異種感覚マッチングの障害が起きる。また、自分の身体や手指の部位の名前を言えなかったり、名前を聞いて対応する身体部位を指示ができない身体失認や手指失認を起こす。

(3)失行apraxia:命令に従って行動できない概念運動失行や、一連の動作を系統的に行えない観念失行などの行動異常を起こす。

(4)失読alexiaや失書agraphia:後頭葉、側頭葉との境界領域の縁上回(40野)と角回(39野)の破壊はと、単語やセンテンスの生成困難やアルファベットやひらがなの読んだり書いたりできなくなる症状を起こす。

2.サルの頭頂連合野の機能

(1)空間視覚:頭頂連合野の後方部分(7a野、PO野、PIP野、LIP野)には視線の向きと視野内の刺激位置情報を統合する細胞、3次元空間内のある範囲の1点を注視しているときに活動する注視細胞。特定の場所の記憶中に持続的に活動する細胞が記録される。PO野では空間に絶対的な位置の情報を扱う細胞が、PIPからは両眼立体視に関係した細胞活動が記録される。LIP野では、特定の方向への急速眼球運動saccadic eye movementに選択性を持つ細胞が記録される。LIP野の電気刺激は急速眼球運動を起こす。

(2)運動視覚:上側頭溝の前壁のMST野は、回転、拡大、縮小、オプティカルフローなど複雑な動きの情報処理に関与する。MST野には、スクリーン上に写し出した動く光の点を目で追いかけるときに活動する細胞がある。

(3)高次の体性感覚情報処理:5野からは、複数の関節の角度の組合せ、関節角度と皮膚刺激の組合せ、複数の皮膚刺激の組合せなどに選択性を示す細胞活動が記録される。

(4)外界への操作:頭頂連合野は、空間認知のみでなく空間への働きかけに関連しており、AIP野、7b野の細胞は、形や操作方法の異なるスイッチを手で操作するとき、特定のスイッチ操作に選択性を示す。急速眼球運動や追跡眼球運動で活動するLIP野やMST野の細胞の役割も空間へのアクションである。我々の空間認識は、空間への働きかけの結果によって補正されており、こうした面でも頭頂連合野が重要な役割を演じている。

図1 サル(a)とヒト(b)の大脳皮質連合野。黄色部分が前頭連合野、ピンク色が頭頂連合野、緑色が側頭連合野、水色は後頭連合野、後頭連合野は視覚前野とも呼ばれる。(医学書院「標準生理学」より、オリジナルは、Brodmann, J. Psychol. Neurol. 6, 275-400, 2906, Brodmann, Vergleichende Lokalisationslehre der Grosshirnrinde in ihren Primazipien dargestellt auf Grund des Zellenbnaues, 1909)


関連項目:

未来の受容野に反応


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(このページに関する連絡先:三上章允)