関連痛、心臓が悪いと左腕に痛みを感じる


 私たちは普通、痛みの原因がある場所に加わるとその場所に痛みを感じる。もし痛みを感じる場所と痛みの原因の発生した場所が異なるとしたら、痛みの原因を取り除くのは難しい。例えば、左指にピンを刺したのに右足に痛みを感じるなどということがあってはならないはずである。ところが、痛みの原因となる場所とは違う場所に痛みを感じることがある。例えば、心臓に痛みの原因があるときに左腕に痛みを感じたりする。これを関連痛という。

 頭部の大部分を除く体の表面や深部の感覚情報(体性感覚)は、脊髄に入り、脊髄を通って脳へ伝えられる。体性感覚には、体の表面の感覚、皮膚に与えられた圧、振動、熱などの感覚の他、筋肉、関節、骨などの深部組織からの情報がある。皮膚、筋肉(骨格筋)、関節、骨などからの情報は脊髄の斜め後方にある後根を通って脊髄に入る。後根が脊髄に入る手前には後根神経節があり、後根神経節の神経細胞の軸索が感覚神経となる。感覚神経を伝わってきた体性感覚の情報は脊髄の後方(後角)にある神経細胞に到達する。内臓からの情報も交感神経と一緒に進み、脊髄の後根を通って脊髄に入る。脊髄では皮膚、筋肉、関節、骨などからの痛みの情報も、内臓からの痛みの情報も後角の細胞に情報を送る。痛みの情報を受け取った後角の細胞の軸索は脊髄の側部を走る脊髄視床路を進み脳へ向かう。後角から脊髄視床路と通る同じ経路をたどるために関連痛は起こる。内臓からの痛みの情報が送られてくるとき、皮膚からの情報を受け取る神経細胞と同一の細胞が内臓からの情報も受け取っていたり、あるいはは皮膚からの情報を受け取る神経細胞のごく近傍に内臓からの情報を受け取る神経細胞があったりするとき、皮膚の痛みとして感じられると考えられている。

図1 心臓からの痛みの信号と皮膚からの痛みの信号は後根から脊髄に入った後、共通の経路を進む。

 脊髄の後根は、脊椎の骨の間から脊髄に入るので、脊椎の骨の何番目のレベルかによってその位置をあらわすことができる。脊椎の骨は首のレベルで7個、胸のレベルで12個、腰のレベルで5個ある。腰の骨の先には尾のなごりの骨があるが、ヒトの場合は融合していることが多い。脊髄に入る神経線維の束には首のレベルでC1からC8まで8本、胸のレベルでT1からT12まで12本、腰のレベルでL1からL5まで5本、さらにその下の仙椎のレベルでS1からS5まで5本が区別される。首のレベルで骨の数よりも1本多いのは頭の骨と首の1番目の椎骨との間に1本目があるからである。関連痛は、皮膚からの情報と内臓からの情報が脊髄で近傍のレベル(近傍の脊髄分節)に入るときに起きる。例えば、心臓からの痛みの情報はT1からT5の範囲で脊髄に入るので、心臓の前面の胸部(T3-T5)でけだなく、C5からT2のレベルで脊髄に入る肩から腕にかけての領域に痛みを感じることになる。

図2 背中の骨は複数の骨を椎間板でつなぐ構造になっており、この構造によって体を前後左右に曲げることができる、脊椎の骨は首のレベルは頸椎、胸のレベルは胸椎、腰のレベルの腰椎、腰から下は仙椎と尾椎に分けられる。頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個あり、5個の仙椎と4個の尾椎は普通融合している。脊髄神経は全部で31対あり、頸椎のレベルで8本、胸椎のレベルで12本、腰椎のレベルで5本、仙椎のレベルで5本、尾椎のレベルで1本ある。



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(このページに関する連絡先:三上章允