旧世界ザルの色覚はヒトと同じ

 現在、地球上には約250種の霊長類がいます。これら現生の霊長類は原猿亜目と真猿亜目に分けられます。原猿亜目のサルは霊長類の中では下等なサルの仲間です。真猿亜目はさらに広鼻下目と狭鼻下目に分けられます。広鼻下目はアメリカ大陸に住む霊長類であり、そのために新世界ザルとも呼ばれています。一方、狭鼻下目はさらにオナガザル上科とヒト上科に分けられます。ニホンザルもヒトもこの仲間です。オナガザル上科のサルはアジア・アフリカに住んでいるので旧世界ザルとも呼ばれています。ヒト科に属するチンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルなどの類人猿もアジア・アフリカに住んでいるし、人類もアフリカ起源なので、狭鼻下目の霊長類全体が旧世界の霊長類です。

 旧世界ザルの中でマカカ属のサルがヒトと同じ色覚を持つことを示す行動実験は1930年代からすでに報告がありました。1960年代に入ると、いくつかの詳細な実験が行われました。図1は、De Valoisら(1974)のデータです。彼らは、カニクイザル3頭、ブタオザル4頭、ベニガオザル2頭で行動実験を行い、その色覚をヒトの色覚と比較しました。

 彼らが用いた第1のテストは、3種類の定常光とフリッカー光を同時に呈示し、フリッカー光を選ぶと報酬を与える課題です。この課題では各波長毎に4種類の光を次第に暗くして、フリッカー光が見分けられなくなる閾値を測定し、動物の分光感度を求めました。10Hzのフリッカーで調べた暗所視の感度と、25Hzのフリッカーで調べた明所視の感度は、正常色覚者のヒト被験者と同じでした。

 つぎに、4つのうち1つだけ異なった色の刺激を呈示し、この刺激を選択すると報酬を与える課題をテストしました。この課題では、最初の実験で測定した明るさの感度のデータを用い、4つの刺激の明るさがテストするサルに同じ明るさに見えるように調節しました。白色光から各波長の単色光を見分けるテストでは、テストした全てのサルが全ての色を白色光と異なると反応しました。このテストによりこれらのサルは「色盲」ではないことが確認されました。また、光の波長の識別できる閾値を求めたところ、図1Aのように、各波長における識別できる波長差の最小値はヒトのデータとよく似ていました。さらに、基準となる黄色と同じ色になる赤と緑の混色比を求めるアノマロスコープの検査でも、図1Bのようにヒトと類似のデータが得られました。彼らの一連の実験ではすべての検査個体がヒトと同じ3色型色覚を持つことが明らかになりました。


 1960年代には網膜の神経節細胞の色応答を調べた研究もマカカ属の一種であるアカゲザルが3色型の色覚を持つことを示しました。その後、1970-90年代には網膜電図(ERG)を用いた研究、1980-90年代には網膜視細胞の分光分析を用いた研究、さらに、1990年後半以降は遺伝子レベルによる研究が行われ、これまでにオナガザル科の18種類(アカゲザル、カニクイザル、ブタオザル、ベニガオザル、タラボワン、パタスモンキー、グリベットモンキー、ダイアナモンキー、ブルーモンキー、モナモンキー、ショウハナグエノン、クチヒゲグエノン、アカオザル、ブラッザモンキー、アンゴラコロブス、アビシニアコロブス、シルバートン、ギニアヒヒ)、テナガザル、オランウータン、チンパンジー、ゴリラの色覚についてのデータが集まりました。オナガザル科のサルについては、現生の種のまだ約15%の検査が行われたに過ぎませんが、これまでに検査が行われた旧世界ザルと類人猿のすべての種が3種類の錐体視物質を持っており、その色覚は3色型でした。そのため、旧世界霊長類は、すべてヒトと同じような色覚を持つとする見方が一般的です

<関連ページ>

色は脳で見る

色覚の進化




 現在、地球上には約250種の霊長類がいます。これら現生の霊長類は原猿亜目と真猿亜目に分けられます。原猿亜目のサルは霊長類の中では下等なサルの仲間です。真猿亜目はさらに広鼻下目と狭鼻下目に分けられます。広鼻下目はアメリカ大陸に住む霊長類であり、そのために新世界ザルとも呼ばれています。一方、狭鼻下目はさらにオナガザル上科とヒト上科に分けられます。ニホンザルもヒトもこの仲間です。オナガザル上科のサルはアジア・アフリカに住んでいるので旧世界ザルとも呼ばれています。ヒト科に属するチンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルなどの類人猿もアジア・アフリカに住んでいるし、人類もアフリカ起源なので、狭鼻下目の霊長類全体が旧世界の霊長類です。

 旧世界ザルの中でマカカ属のサルがヒトと同じ色覚を持つことを示す行動実験は1930年代からすでに報告がありました。1960年代に入ると、いくつかの詳細な実験が行われました。図1は、De Valoisら(1974)のデータです。彼らは、カニクイザル3頭、ブタオザル4頭、ベニガオザル2頭で行動実験を行い、その色覚をヒトの色覚と比較しました。

 彼らが用いた第1のテストは、3種類の定常光とフリッカー光を同時に呈示し、フリッカー光を選ぶと報酬を与える課題です。この課題では各波長毎に4種類の光を次第に暗くして、フリッカー光が見分けられなくなる閾値を測定し、動物の分光感度を求めました。10Hzのフリッカーで調べた暗所視の感度と、25Hzのフリッカーで調べた明所視の感度は、正常色覚者のヒト被験者と同じでした。

 つぎに、4つのうち1つだけ異なった色の刺激を呈示し、この刺激を選択すると報酬を与える課題をテストしました。この課題では、最初の実験で測定した明るさの感度のデータを用い、4つの刺激の明るさがテストするサルに同じ明るさに見えるように調節しました。白色光から各波長の単色光を見分けるテストでは、テストした全てのサルが全ての色を白色光と異なると反応しました。このテストによりこれらのサルは「色盲」ではないことが確認されました。また、光の波長の識別できる閾値を求めたところ、図1Aのように、各波長における識別できる波長差の最小値はヒトのデータとよく似ていました。さらに、基準となる黄色と同じ色になる赤と緑の混色比を求めるアノマロスコープの検査でも、図1Bのようにヒトと類似のデータが得られました。彼らの一連の実験ではすべての検査個体がヒトと同じ3色型色覚を持つことが明らかになりました。


 1960年代には網膜の神経節細胞の色応答を調べた研究もマカカ属の一種であるアカゲザルが3色型の色覚を持つことを示しました。その後、1970-90年代には網膜電図(ERG)を用いた研究、1980-90年代には網膜視細胞の分光分析を用いた研究、さらに、1990年後半以降は遺伝子レベルによる研究が行われ、これまでにオナガザル科の18種類(アカゲザル、カニクイザル、ブタオザル、ベニガオザル、タラボワン、パタスモンキー、グリベットモンキー、ダイアナモンキー、ブルーモンキー、モナモンキー、ショウハナグエノン、クチヒゲグエノン、アカオザル、ブラッザモンキー、アンゴラコロブス、アビシニアコロブス、シルバートン、ギニアヒヒ)、テナガザル、オランウータン、チンパンジー、ゴリラの色覚についてのデータが集まりました。オナガザル科のサルについては、現生の種のまだ約15%の検査が行われたに過ぎませんが、これまでに検査が行われた旧世界ザルと類人猿のすべての種が3種類の錐体視物質を持っており、その色覚は3色型でした。そのため、旧世界霊長類は、すべてヒトと同じような色覚を持つとする見方が一般的です

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(このページに関する連絡先:三上章允