色覚の進化

色覚の進化

 色覚の起源は無脊椎動物の時代にあり、彼らの色検出の仕組みは脊椎動物と高い共通性を持っています。行動レベルでも、照明光が変わっても安定した色感覚の得られる「色の恒常性」といった色覚の特性は、昆虫にも存在します。脊椎動物で見ると、最も進化した哺乳類は、その大部分が2種類の錐体視物質しか持たないいわゆる「赤緑色盲」です。ヒトや類人猿、オナガザル科のサル達は3種類の錐体視物質を用いて色を検出しますが、魚類、両生類、爬虫類、鳥類の大部分は4種類の錐体視物質を持っており、彼らの方がヒトやサルよりも豊かな色覚を持っている可能性があります。ヒトが現在もっている色覚は、ヒトの祖先が歩んだこうした歴史の産物であり、現生のヒトやサルの色覚のメカニズムの中にその歴史が埋め込まれています。

 ヒトやオナガザル科のサル達がもっている3種類の錐体視物質の起源についは、広鼻猿(新世界ザル)と狭鼻猿(旧世界ザ)が分岐したおよそ3000-4000万年前と見るのが一般的です(例えば、Surridge et al. Trends Ecol. Evol. 18, 198-205, 2003)。しかし、広鼻猿と狭鼻猿の共通の祖先で、より下等なサル類である原猿の中にも3種類の錐体視物質を持つ個体がおり、3色型の起源はもっと古いとする主張もあります(Dominy and Lucas, Nature, 410, 353-366, 2001)。いずれにしても、哺乳類の祖先である原始哺乳類は爬虫類の全盛期に夜行性の生活をおくる中で哺乳類の祖先が保持していた4種類の錐体視物質遺伝子の2つを失いました。そのため殆どの哺乳類は2色性色覚となしましたが、その後ヒトの祖先は長波長側の視物質遺伝子が分離し、異なる吸収波長特性を持つ2種類の錐体視物質を持つことにより3色性となしました。ヒトでは、この長波長、中波長の視物質遺伝子がX染色体上にタンデムに配列し、両遺伝子の相同性が高いため、減数分裂時にしばしば遺伝子組換えが起こり、遺伝子の増加や欠損・ハイブリッドの遺伝子が生成します。ヒトではこのような組換えによる多くの多型が見られ、色盲・色弱の出現頻度も男性で5-8%を占めています。

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