第5次視覚野が破壊されると動きが見えなくなる


視覚情報は目から入ってから、外側膝状体(がいそくしつじょうたい)という場所を通って大脳皮質の一番うしろにある第一次視覚野へたどりつきます。その前方にはたくさんの視覚野があり、第5次視覚野(MT野)はその1つです。第5次視覚野の特徴はこの場所のほとんどの神経細胞が動く光刺激によく反応し、しかも神経細胞ごとに、特定の動きの方向やスピードの範囲を担当していることです。

 この第5次視覚野に神経毒(イボテン酸)を微量注入し第5次視覚野の一部の機能を停止させると動きのみが見えなくなります。

図1 MT野(第五次視覚野)は髄鞘が良く発達しており、髄鞘染色によって周りの領域から区別することができます。

図2 MT野へのイボテン酸注入。水平断のニッスル染色。左が後ろ。図の上にある左から2番目の溝(上側頭溝)の後ろの壁の奥にMT野があります。

図3 サルは光の点をじっと見るように訓練されています。Aのように注視点が最後まで中央に留まっている時と、Bのように位置が変わって新しい位置に停止しているときと、CやDのように位置が変わった直後に動き出すことがあります。位置が変わったり、位置が変わった直後に動き出すときは、光の点を目で追いかけるように訓練されています。

図4 縦軸は目標の光点または目の位置、横軸は時間の進行を表します。時間の単位はミリ秒(1000分の1秒)です。黒の点線は目標の動き、赤線がイボテン酸注入前の目の動き、青緑がイボテン酸注入後の目の動きです。目標が移動してもすぐには目は動かせないので目を実際に動かすまでに目標が動いてしまいます。イボテン酸注入前は、自分の目が移動するまでに目標がどれだけ移動しているかを毎回(目を動かす時間は毎回少しずつ違うので)計算し正しい位置へ目を動かすとともに、その直後に目標の動きに合わせて目を移動させています。イボテン酸注入の後は、目を移動するまでに目標が移動してしまうことが計算できず、目の移動はいつも大きすぎます。また目を移動させた後、目標のスピードに合わせて目で追いかけることができません。イボテン酸をMT野に入れても止まった目標へは正しく目を移動することができるので、MT野の破壊は動き、動きの方向、動きのスピードの知覚を障害していることが分かります。


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(このページに関する連絡先:三上章允)