地下鉄サリン事件とシナプス


 1994年から1995年にかけて松本市と東京でオーム真理教によって使われたサリンは神経毒の一種です。サリンは神経細胞から次の神経細胞への伝達部分の働きを障害します。

 脳がいろいろな複雑な機能を果たすのは、神経細胞の働きによります。神経細胞は電気信号を使って情報を遠方に伝えますが、次の神経細胞との接合部分では化学物質によって情報が伝えられます。この接合部分はシナプスと呼ばれます。

 シナプスで伝達に関与する化学物質は伝達物質と呼ばれます。伝達物質にはいくつかの物質が知られていますが、その一つにアセチルコリンがあります。運動を担う筋肉と神経とのシナプスや自律神経のシナプスではこのアセチルコリンが伝達物質として使われています。

 アセチルコリンは次の神経細胞との隙間に出て次の神経細胞や筋肉に電気信号を発生するように働きます。このとき、信号伝達に使われたアセチルコリンが分解されて取り除かれないと、つぎの信号伝達の妨げになります。アセチルコリンの分解にはコリンエステラーゼという酵素が使われます。

 サリンはアセチルコリンと構造が似ており、コリンエステラーゼと結合しアセチルコリンの分解を妨げます。




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(このページに関する連絡先:三上章允)