神経線維の信号伝達のスピード


 神経線維の情報を伝える仕組みは、電線を電気が伝わるのとはことなり、イオンが細胞膜を通過することによって発生します。そのため電線を電気が伝わるよりも信号伝達のスピードは遅くなります。

 伝達のスピードを決める要因の1つは神経線維の太さで太いぼどスピードは速くなります。もう一つは、後で説明する跳躍伝導の仕組みを持つかどうか、別な言い方をすると、有髄線維(跳躍伝導の仕組みを持つ神経線維)か無髄線維(跳躍伝導の仕組みを持たない)かということです。

神経線維の太さによる分類(Erlanger and Gasser)

分類

直径

スピード

備 考

15μ

100m/s

骨格筋運動線維、筋紡錘求心線維

50m/s

皮膚触覚、皮膚圧覚

20m/s

筋紡錘運動線維

15m/s

皮膚温度感覚、皮膚痛覚

B

7m/s

交感神経節前線維

C

0.5μ

1m/s

皮膚痛覚、交感神経

A線維とB線維は有髄線維、C線維は無髄線維です。

[付]有髄線維と跳躍伝導

 脳の神経細胞は電気を使って情報伝達します。神経細胞(ニューロン)で電気信号を伝える神経繊維(情報を伝える突起=軸索)は普通何本も束になって走っています。電気信号(活動電位)が伝わって行くとき、何本もの神経線維が隣りあって進むと、お互いにインパルスがもれてしまい混信する恐れがあります。混信を防ぐため、神経線維の周囲を絶縁物質が取りまいています。脊椎動物における多くの神経線維では、この絶縁物質の薄い膜が何重にも巻き付いています。このように何重にも巻き付いた絶縁物質の膜を髄鞘(ずいしょう)と呼んでいます。絶縁物質の薄い膜は、数十ミクロン間隔で、途切れた部分(くびれ)をつくっています。このくびれは、ランビエの絞輪(こうりん)と呼ばれています。このような構造を持つ神経線維を、髄鞘を持つ神経線維という意味で有髄線維と呼んでいます。

図1 有髄線維を持つ神経細胞の模式図(参照:神経細胞の特徴

 髄鞘を持つ神経線維の信号伝達の仕組みの解明には、日本人研究者の活躍がありました。慶応大学の加藤元一教授と田崎一二博士です。加藤教授は、1934年に出版した本の中で、彼の研究室の久保と小野が行った実験を紹介し、絶縁物質のくびれ部分ではインパルスが発生しやすく、くびれ部分以外のところではインパルスが発生しにくいことを報告しました。田崎博士は、さらに、インパルスが絶縁物質のくびれ部分にのみ発生し、くびれからくびれへと跳び跳びに伝わっていく仕組みを明らかにしました。

 髄鞘を持つ神経線維では、インパルスは、絶縁物質のくびれ部分にのみ発生し、くびれからくびれへと跳び跳びに伝わっていきます。これを、跳躍伝導と呼んでいます。跳躍伝導でくびれからくびれへとインパルスが伝わるときは、普通の電線を電気が伝わるときのように電子の移動で伝わり、くびれ部分でのみ神経線維の膜の中と外とのイオンの移動によってインパルスが発生します。このため、髄鞘をもつ神経線維では、髄鞘を持たず髄鞘の間のくびれも持たない神経線維(無髄線維)よりもずっと速い伝導速度を実現できます


図2 無髄線維と有髄線維における活動電位の伝導:無髄線維では隣り合った膜の部分に順繰りに膜電位変化が伝わるので伝導に時間がかかる。有髄線維ではランビエの絞輪部分でのみ膜電位変化が起こればよいので、スピードが速くなる。



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(このページに関する連絡先:三上章允)