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脳の進化

 様々な動物で脳を比較しようとするとき、最も単純な方法はその大きさを比較することです。脳の大きさを比較しようとするとき、問題となるのは体の大きさの違いです。脊椎動物の場合、体重は10グラム程度から100トン近いものまであります。脳の重さも1グラム程度から5キログラム近くのものまであります。一般には体重が重くなると、脳も大きくなるので,脳の重さの絶対値だけを比較するのは不公平です。そこで,脳の大きさを比較する場合,体重との相対値を用いることで、体重に比較して脳が大きいかどうかを見る方法が使われてきました。198種の脊椎動物を調べたJerisonのデータ(図1)によれば,魚類,両生類,爬虫類の脳重量は体重比で相対的に低く,鳥類と哺乳類は相対的に高い値を示します。恐竜の推定体重と脳重量を同じ図にプロットすると爬虫類とほぼ一致します。Hopsonが行った肉食恐竜と草食恐竜の比較では肉食恐竜の方が大きな脳を持ち,捕食のための運動能力の獲得の基礎に脳の発達があったのではないかと推定されます。

図1 脊椎動物における脳重量の比較。縦軸は脳の重量、横軸は体重。縦軸横軸とも対数軸。数字の1と2は肉食恐竜、3-6は草食恐竜。(瀬戸口、1993を改変)

 図1のように鳥類と哺乳類が体重に比較して大きな脳を持っていることが分かったわけですが、鳥類と哺乳類では脳の進化の仕方が違っています。鳥類の脳容量の増加は、爬虫類の脳の構造を基本的に維持しながら進行しました。そのため、鳥類は大脳新皮質を作らずに大脳半球が拡大していきました.一方,哺乳類の脳容量の増加は、大脳新皮質の発達によって脳が大きくなりました。

図2 哺乳類の脳重と体重との対比。はヒト、は霊長類のデータ。Elephant ゾウ、 Pilot Whale ゴンドウクジラ、 Man ヒト、 Dolphin イルカ、 Chimpanzee チンパンジー、 Vervet ベルベットモンキー、 Cat ネコ、 Squirrel Monkey リスザル、 Galago ガラゴ、 Hump-backed Whale ザトウクジラ、 Sheep ヒツジ、 Coyote コヨーテ、 Fox キツネ、 Dolichotus パタゴニアモルモット、 Opossum フクロネズミ、 Hedgehog ハリネズミ、 Rat ラット、 Mole モグラ、 Shrew トガリネズミ (Hofman 1982を改変)

 図2は、主な哺乳類のデータです。ゾウやクジラはヒトよりも大きな脳を持っていますが、体重当たりの比率では哺乳類の平均値に近い値になっています。


参考文献:

1.Jerison H J, Evolution of the Brain and Intelligence, Academic Press, New York, 1973.

2.Jerison H J, Animal intelligence as encephalization. Phil. Trans. R. Soc. Lond. B. 308, 21-35, 1985.

3.Hopson J A, Relative brain size and behavior in archosaurian reptiles. Annu. Rev. Evol. Syst., 8, 429-448, 1977.

4.Hofman, M. A., Encephalization in Mammals in Relation to the Size of the Cerebral Cortex. Brain Behav. Evol. 20, 84-06, 1982.

5.瀬戸口烈司、哺乳類の大脳皮質の進化、「視覚と脳の進化」(三上章允編)、14-88、朝倉書店、1993.

6.大石 正、小野高明編「光環境と生物の進化」、共立出版、2000.

関連項目:

大脳皮質の進化(準備中)

化石人類の脳


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(このページに関する連絡先:三上章允)