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脳は場所によって機能が異なる(機能局在)


 19世紀前半に活躍したフローレンスは、ウサギやハトの大脳の刺激や破壊を行って、大脳皮質は場所によって機能が違っていないと結論した。彼によれば、大脳を前からであれ、後ろからであれ、十分広く破壊しても特定の機能が失われることはない。広範な切除を行えば、その切除の大きさに応じてすべての機能が徐々に弱まるのみである。この考えは、当時の生理学の主流であった。一方、ジャン・バウイランドは脳は場所によって異なる機能を持つと主張するが決定的な証拠を欠いていた。

 ブローカの勤めていたピセートル病院にやってきたルボルニュという一人の患者が、この論争に有力な証拠を提出することとなった。この患者は言葉をしゃべることができないが、その他の知能は良く保たれていた。彼は1861年4月に死亡しブローカが剖検した結果、左の下前頭回に脳梗塞を見い出した。ブローカはこの領域に言葉を話す機能が局在すると考えた。

 ブローカによる運動性言語野の発見につづいて、1870年、フリッチュとヒッチッヒは、ごく弱い電流で大脳皮質を刺激すると、ごく限局された筋肉群のみを活動させることができること、また、電極をわずかにずらすと別の筋肉群が動くことを確かめた。これら一連の研究成果の発表の後、脳が場所によって異なる機能を持つこと、大脳に機能局在のあることを誰も疑わなくなった。

 「脳の機能局在」という表現は、特定の機能が脳の特定の部位に局在するという意味であり、この表現の中には異なる役割を担った脳の領域が相互に連携しながら種々の機能を実現している側面、脳が全体として機能している側面が含まれていない。フローレンスらの「全体論」と対決した頃の「局在論」の意義を十分認めた上で、脳が全体として働いていることへの留意も必要である。



関連項目:

脳の中のこびと。

視覚野はいくつある。

運動野はいくつある。


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(このページに関する連絡先:三上章允)