宮嶋研究室
 

研究紹介

NZのソーシャルワークを調査

201237日~16日の日程で、ニュージーランドのソーシャルワークに関する調査を行いました。この調査は、DI者の権利擁護がソーシャル・サービスとして進められるべきであるという立場から、オープン・アダプションとファミリー・グループ・カウファレンスが進展しているニュージーランドを対象としたものです。

38日と9日は、NZの首都ウェリントンにある、Child, Youth and Family (CYF)を訪問しました。CYFは、子どもの権利擁護を担当する行政機関であり、全国1500名のソーシャルワーカーを要しています。まずインタビューしたのは、養子縁組への支援についてです。CYFの主担当者であるアイリーンさんによれば、「何よりも大切なことは、子どもにオープンにすること」ということでした。

 8日の後半には、CYFが進めるSWiS(=social work in schoolの略。日本のスクールソーシャルワークのこと)の状況を伺いました。担当のリダさんによれば、CYFSWiSが連携を強めることにより、子どもがin Careに至る状況を予防できるということでした。

CYFの機能として私が注目したのは、スーパービジョン・システムと養子縁組担当ソーシャルワーカーの実務のIT化です。養子縁組を希望するBirth Parentsのアセスメントから養親との協議調整への介入、裁判所による養子縁組確定の審判まで、詳細な記録がITによりなされ、コスト換算や統計処理までなされていました。CYFでは、養子縁組担当ソーシャルワーカーのスーパービジョンを行う、スーパーバイザーのトレーニングについてもIT化されており、実践からトレーニングまでがITシステムとして運用されていました。

 311日には、クライストチャーチに移動し、現地の日本人会が主催する「ジャパン・デー」に参加しました。会場には3000人が詰めかけました。

このイベントは、今年初めて、東日本大震災の被災者を追悼する意味から企画されたものです。私は本学学生たちが行ったボランティア活動をポスターで紹介しました。

 ボランティア活動、あるいは市民活動が日本よりはるかに進んでいるNZにあって、日本人会の主体的で組織的な活動は、ここから出発とのことでした。この日の最後には追悼式典が模様されました。

  12日、Batherd of Social work(BSW)を養成するCPITのグリニスさんを訪問しました。ソーシャルワークの理論と実践の統合をいかに進めるのかは、グローバルな課題であり、ここNZでも試行錯誤がなされているようでした。しかし、このCPITのコンセプトは明確で、学生がいかに学びを統合したのかを評価する仕組みが構築されていました。

 統合と言えば、やはりマオリ文化とパケハ文化の統合でしょう。同校ではこの点を大変重視し、日々の教育に組み込まれていました。

 次にNZCode of Ethics について学ぶため、ANZSWを訪問しました。周知のとおり、NZSWr登録制度は2003年に始まったばかりで、制度としては新しく、SWrの裾野が十分に広がっているとはいえません。しかし、Ethicsをベースとしたソーシャルワーク実践は、SWrの実践を評価する尺度として根付いており、日本とは大きく異なる状況にありました。 

13日(火)には、CYFの南島のマネージャーであるピーターさんを訪問しました。同氏には、アダプションとAIDについて、尋ねることができました。氏によれば、アダプションは、「両親と遺伝上のつながりがないが、AIDは片親とのつながりがある。」この事実が大切なのだと語られました。この見解との関係で類推すると、ARTに関する施策がCYFのような子どもの権利を擁護する機関の管轄ではなく、親の権利を擁護する機関の所管になる理路が了解できるのではないでしょうか。

その日の午後、コミュニティ・サポート・ワーカーの活動に同行しました。本日のクライエントであるケンさんは、15年ほど前に3年間、交換英語教師として日本で働いた経験のある方でした。45歳のとき、脳梗塞で半身麻痺となった氏は、在宅で一人暮らしをしておいでになります。この日は、3人でCaféに出かけ、暖かな日差しの中で、ケーキを頂きました。クライエントのニーズを最大限に尊重するクライエント・センタード・アプローチがなされているケア・サービスが展開されていました。

 日本の大震災の少し前、CHCHでも大震災が発生しています。震災の爪あとを視察しました。崖崩れで転落した家屋や梁が崩れ落ちた市庁舎、解体作業が進む市街地が今もあちらこちらに見受けられます。震災の爪あとは、子どもたちの心にも及んでおり、市郊外にあるメンタルヘルス・ホスピタルを訪問しました。CHCHでは、大規模な地震が4度にわたり発生しており、2度目6月の地震以降、ケアの件数がピークに達したとのこと。ケアは上下関係のない、ドクターやソーシャルワーカーを含むチームで展開され、今後も長期的な展望のなか、国からの補助金で災害救済チームの活動が続いていきます。

 この病院では、震災に対する「備え」が震災以前に構築されており、概ね想定どおりの対応ができたとのことでした。しかし、トラウマ・ケアの深刻さと広がりに対するスタッフのトレーニングをさらに充実させる必要があったとふり返られていました。

 最終15日には、CHCHのオーガニゼーションの1つであるヘルスケア・クライストチャーチのメシアさんから話を聞きました。

 CHCHに震災前から組織されていた多くのNGONPOが、震災を契機にネットワークを汲み、双方向・重層的なコネクションを形成していった経過を聞くことができました。また、今後、解体されたコミュニティの再興のため、様々なアイデアを募集し、楽しさや夢を語りあえる機会や場を創造したいと語られました。

 今回、NZの大変多くの皆さんにお世話になり、ご協力いただき、多くの知恵と英知を拝聴すること、また、拝読すべき資料を頂きました。皆さんからのご高配に応えられるよう、研究を進めます。近い将来、何らかの報告をと考えています。写真入ファイルはこちら NZ 2012-s.pdf