宮嶋研究室
 

自己紹介

こんな本書いています(16)

このほど、ヘルス・システム研究所から『生殖医療と脱「出自」社会』(単著)を出版しました。(ISBN 978-4-906827-03-9)

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 本書は、

生殖医療は「人の生命の誕生に関わる医療」であり、患者と医師という一対一の関係では完結させることができません。

第三者を介する生殖補助医療において生まれてくる子どもの法的地位保全は重要な問題であり、慎重な議論を重ね、子の福祉を最優先するような法益が考えられなければなりません。

本書では、高度生殖医療を使うことによって生まれた子、育まれた家族が、地域やコミュニティから排除されないためには、いかなる社会をデザインし、かつ専門職等からのサポートがいかに必要であるのかを探求しました。

一連の調査は、2008(平成20)2009(平成21)年度 科研費(若手研究(スタートアップ))「非配偶者間生殖補助医療で生まれた子どものナラティブ再構築に関する研究」(課題番号:20830112)及び2011(平成23)2013(平成25)年度 科研費(基盤研究(C))「第三者の関わる生殖技術とソーシャルワーク」(課題番号:23530773)並びに2014(平成26)2016(平成28)年度 科研費(基盤研究(C))「高度生殖医療とソーシャル・インクルージョンに関する研究」(課題番号:26380790)により行っています。

本書の目次は、

はじめに

第1章 当事者の語り

1 出自」を求める子どもたちの声 2 ニュージーランド在住Aさん 3 「不妊」を排除しない社会に-わが国における不妊当事者団体の声-

第2章 未来志向のママたち

1 「輝くママ」の循環システム...日本の場合 2 日本人ママたちによるプレイグループ...NZの場合 3 異文化社会における子育て-NZ在留邦人ママたちへのインタビュー調査より-

第3章 居場所を求めて- プラットフォーム-

1 「いじめ」当事者のインクルージョン 2 異なる「出自」の子どもも排除されないか 3 二ュージーランドの日本人と日本人会 4 エイジレスライフ-NZ在住邦人高齢者は今- 5 被災地邦人組織の新たな役割

第4章 日本は何を選択すべきなのか

1 生殖医療施策と福祉の視点 2 生殖医療福祉施策の日本とNZの比較 3 生殖医療に関する見解の変遷

第5章 脱「出自」社会とは

1 排除されずに居場所を求めるために~ソーシャル・インクルージョンの理解~ 2 ニュージーランドからの示唆 3 生殖医療と脱「出自」社会

おわりに

本書の特徴は、次の通りです。

高度生殖医療がグローバルに伸展していくことに着目し、本書ではグローバル・シンキング、ローカル・アクトという観点で研究を進めた。多くの先進国での取組みがある中で、ニュージーランドを選択した理由は、高度生殖医療にSWが関わり、子どもの出自を知る権利とドナーや提供機関の責務について規定している法律を有していることであった。また、ニュージーランドは、ニュージーランドという固有の社会事情に応じた独自の社会システムを構築してきた。その根幹にはマオリとパケハの歴史的背景があった。マオリとパケハなど「生まれ」によって区分されてきた人びとの権利を、歴史を踏まえて歴史を遡り、擁護することを政策上実現させたことである。時間を遡り、人権を擁護する中に「出自」もある。ニュージーランドのように時間を遡り、人権を主張でき、権利が擁護される仕組みづくりがわが国においても求められよう。

筆者が提唱する生殖ケア・ソーシャルワークにいう環境の整備は、①当事者の権利を擁護する法律の整備と、その後のアクション並びにアクションへの支援、②当事者性を有する関係者の相互対話と、橋渡しのできるシステムの構築、さらに③これまで私的な出来事とされてきた「子どもを産み、育てること」をグローバル化した社会の中で、社会的な環境下で行なわれることに変化させていくグローバル・インクルージョン理念として確立し、④そうした理念が確立した中で、当事者が希望を実現できるよう居場所を確保していくことが含まれる。生殖ケア・ソーシャルワークでは、権利に基づく不妊相談、喪失に対応するスピリチュアル・ケア、グローカルな価値判断に加え、妊娠期から子育て期に対応する安心感の醸成をも支援の対象とする。高度生殖医療を活用することを是とする前提として、異国での当事者のHuman well-being実現を視野におく必要がある。それは「不妊/不妊治療中/治療後」を通した将来に関わり、当事者がどこを居場所と選ぼうとも、当事者のライフマネジメント力を高めることをも支援することである。

出自を知り、アイデンティティを確立することは、国連子どもの権利条約で認められた子どもたちの権利である。そうした子どもの権利を擁護するソーシャルワークは、国際子どもソーシャルワークの課題の一つへの対応である。グローバル化したわが国においては、教育現場の一端を担うスクールソーシャルワーカーが、こうした出自の異なる子ども達のアイデンティティに配慮した、その望ましい確立をもサポートしていく実践力が必要とされている。この点については、十分に言及できておらず、海外教育施設へのスクールソーシャルワークの導入やそれに関する可能性の追求として今後の課題としておきたい。

 自を知り、アイデンティティを確立することは、国連子どもの権利条約で認められた子どもたちの権利である。そうした子どもの権利を擁護するソーシャルワークは、国際子どもソーシャルワークの課題の一つへの対応である。「生まれてくることが幸せ」と思える社会とは、誰もが差別されたり、偏見を持たれたり、排除されたり、不公平な扱いをされない社会である。生まれてくる子どもや高度生殖医療を利用する者、さらには親族や同年代の人々に対しても、十分なで確な情報が届くという配慮や状況も含まれる。必要な時に必要な人に必要な情報を届けられる社会システムが構築され、容易に情報が得られる情報のユニバーサル化が必要である。それによって、当事者の人権は擁護されると考えている。